捕まった小惑星説
太陽系の外側でできた小天体が火星の近くまでやってきて、重力で捕まった。
- 根拠
- 表面の色や暗さが、太陽系の外側にある暗い小惑星に似ている。
- 弱点
- 捕まった天体なら、今のようなきれいな円い軌道にはなりにくい。
MMX GUIDE
日本の探査機MMXが、火星の衛星フォボスの砂を持ち帰る5年の旅に出発しました。これから何が起きるのか、知っておきたいことをひとつのページにまとめました。
2026年10月23日時点の情報です
01 30秒でわかるMMX
MMX(Martian Moons eXploration、火星衛星探査計画)は、JAXAが中心になって進める探査です。火星のまわりを回る月「フォボス」に着陸して砂を採り、地球へ持ち帰ります。火星のまわりから物を持ち帰るのは、成功すれば世界で初めてです。
02 打ち上げ結果
MMXを載せたH3ロケット10号機は、予定どおりの時刻に打ち上げられました。H3ロケットが探査機を火星へ向かう軌道に送ったのは、今回が初めてです。
打ち上げの瞬間は、JAXAのライブ中継の録画で見られます(打ち上げ10秒前から再生されます)。
打ち上げライブ中継(JAXA公式YouTube)
ロケットは八丈島と小笠原諸島のあいだの上空を通ったため、夜明け前の空で太陽に照らされたロケットが、関東など本州からも見えました。
約10か月かけて火星へ向かい、2027年8月ごろに火星のまわりに到着する予定です。到着のときは、エンジンを噴いてスピードを秒速約1 km落とし、火星の重力に捕まえてもらいます。決まった時刻にしかできない、旅の最初の大きな山場です。
探査機の最新の状況(MMX公式サイト)03 火星への道のり
MMXは、太陽のまわりを大きく回りながら、約10か月かけて火星に追いつきます。地球からまっすぐ火星に向かうのではなく、地球と火星の動きに合わせて、燃料が少なくて済む道を通ります。
04 なぜフォボスなのか
火星には、フォボスとダイモスという2つの小さな月があります。地球の月とくらべるとずっと小さく、形もじゃがいものようにいびつです。この2つの月がどうやってできたのかは、まだわかっていません。
大きく分けて、2つの説があります。
太陽系の外側でできた小天体が火星の近くまでやってきて、重力で捕まった。
大昔の火星に大きな天体がぶつかり、飛び散った破片が集まって月になった。
「見た目は捕まった小惑星っぽいのに、軌道は衝突でできたっぽい」という、手がかりどうしが食い違う状態が続いています。2024年には、火星に近づいた小惑星が火星の強い重力で引きちぎられ、その破片の一部が捕まったという新しい説も出されました。
答えを出す決め手が、実際の砂です。捕まった小惑星なら、水や有機物を含む隕石に似た成分が見つかるはずです。衝突でできたなら、高温でできた火山岩のような成分が出てくるはずです。地球に持ち帰れば、遠くから眺めるだけではわからない成分や年代まで調べられます。
フォボスには、火星から飛んできたかけらも降り積もっていると考えられています。そのため、フォボスの砂には火星そのものの歴史が少し混ざっているかもしれない、という楽しみもあります。

05 5年の旅
種子島からH3ロケットで出発しました。
2027年8月ごろ、火星のまわりに到着します。
フォボスのまわりを回りながら全体を調べ、着陸地点を選びます。ローバーを降ろしたあと、本体が2回着陸して砂を採ります。最後にもう1つの月ダイモスのそばを何度も通って観測します。
1年弱かけて地球へ戻ります。
砂の入ったカプセルが南オーストラリア州に着陸し、回収されます。
探査機は、行きの部分・フォボスで活動する部分・帰りの部分の3つが組み合わさった形をしています。使い終わった部分から切り離していく「三段式」で、打ち上げのときの重さは約4.5トンです。
06 見どころ
本体が着陸する前に、ドイツとフランスが作ったローバー「IDEFIX(イデフィックス)」を降ろします。日本のチームは「閃き(ひらめき)」という日本語の愛称もつけています。重さは約25 kgありますが、フォボスの重力は地球の約1700分の1しかないため、地面にかかる重さはわずか15 gほどです。こんなに弱い重力の中を車輪で走るのは、世界で初めてです。
秒速1 mmほどのゆっくりした速さで、100日以上かけて走りながら表面の砂の性質を調べます。そのデータは、あとで本体が安全に着陸するための大事な手がかりになります。投下は2028年の終わりから2029年の初めになる見込みです。
フォボスの重力は、はやぶさ2が行ったリュウグウより2桁ほど大きく、探査機は火星の重力にも引っぱられます。そのためMMXは、一瞬だけ触れて採るのではなく、4本の脚で降り立ち、表面に約2時間半とどまって砂を採ります。
採り方は2つあります。ひとつは、ロボットアームの先の筒を地面に差し込む方法。もうひとつは、着陸脚の足の裏からガスを吹きつけ、舞い上がった粒を集める方法(NASAが提供)です。着陸は場所を変えて2回行う計画です。
フォボスの表面を撮るカメラOROCHIは、色の違う光を撮る7台の広角カメラと、着陸のときに使う白黒カメラ1台、合わせて8台でできています。名前は、頭が8つある伝説の大蛇「八岐大蛇(やまたのおろち)」に由来します。
火星のまわりから物を持ち帰った探査は、まだありません。中国の「天問3号」も、火星そのものから砂を持ち帰る計画で2031年ごろの帰還をめざしています。MMXは、日本が国際協力のもとで挑む、はやぶさ・はやぶさ2に続く3回目のサンプルリターンです。
07 小ネタ
金色に見えるのは、探査機を包む断熱材の色です。何層にも重なったシートで、外からの熱をさえぎります。断熱材には銀色や黒色のものもありますが、MMXは金色のものを使っています。
火星のそばから地球へ送れるデータの量には限りがあります。送りきれなかった画像や観測データは、カプセルの中のメモリに保存して、砂と一緒に地球へ持ち帰ります。
観測機器の名前には日本語が隠れています。遠くを見る望遠カメラのTENGOOは鼻の長い「天狗」、8台のカメラを束ねたOROCHIは頭が8つの「八岐大蛇」、フォボスの成分を見るMEGANEは「眼鏡」です。
フォボスの重力は地球の約1700分の1です。体重60 kgの人がフォボスに立つと、重さは約35 g、卵1個よりも軽くなります。ジャンプすると、ゆっくりと高く飛び上がってしまうほどです。
火星に隕石がぶつかると、火星の砂や岩のかけらが宇宙に飛び散ります。火星のすぐ近くを回るフォボスには、もう1つの月ダイモスの100倍以上も、そのかけらが降り積もっていると考えられています。
「#グッドラックMMX」には、約5,000人から応援メッセージが届きました。メッセージはSDカードに記録して、カプセルとローバーに積んであります。カプセルの分は砂と一緒に地球へ戻り、ローバーの分はずっとフォボスに残ります。
着陸脚の先の丸いパッドには、しま模様があります。飾りではなく、熱くなりすぎないように熱の伝わり方を調整するためと、降り立ったときに探査機とフォボスの電気の状態をそろえるための工夫です。
JAXAの公式オンラインゲームでは、MMXの探査機を組み立てて、ミッションに挑戦できます。無料で、登録もいりません。
MMX公式オンラインゲーム(JAXA)08 はやぶさ2とくらべると
| はやぶさ2 | MMX | |
|---|---|---|
| 行き先 | 小惑星リュウグウ | 火星の衛星フォボス |
| 大きさ | 約0.9 km | 約27 × 22 × 18 km |
| 砂の採り方 | 一瞬だけ触れて採る(タッチ・アンド・ゴー) | 脚で降り立ち、表面に約2時間半とどまって採る |
| 持ち帰る量 | 目標0.1 g(実際は約5.4 g) | 目標10 g以上 |
| 旅の期間 | 約6年(2014年〜2020年) | 約5年(2026年〜2031年度) |
| ローバー | 小型ローバー4台(うち1台は独仏製) | IDEFIX(独仏) |
09 これからの予定
JAXAがMMX計画を発表
正式なプロジェクトになる
H3ロケット試験機1号機の失敗を受け、打ち上げを2026年度に延期
探査機を種子島宇宙センターへ運び込む
打ち上げ成功
火星のまわりに到着
ローバーをフォボスへ投下(見込み)
火星のまわりを出発
地球に帰還し、カプセルを回収
2027年以降は現在の計画です。運用の状況によって変わることがあります。
10 ことばの解説
火星に着くまで約10か月、帰ってくるまで約5年。宇宙コミュニティのCosmo Base(コスモベース)では、MMXのニュースや「これってどういうこと?」という疑問を、気軽に話せます。
Cosmo Baseに参加するこのページは、JAXAなどが公開している情報をもとに、個人(FSIFメンバー)とCosmo Baseがまとめた解説です。MMX公式のページではありません。